ぽてちの本棚

ぽてちのブログです。読んだ本とその感想を記録しています。読者手帳みたいなもの。拙いブログですが遊びに来ていただければ幸いです。

優しさの究極解が表現された作品。湊かなえ『ポイズンドーター・ホーリーマザー』「優しい人」読んだ感想、考えたこと ~中編~

 

湊かなえさんの『ポイズンドーター・ホーリーマザー』。

この本の中で、とても共感した作品がありました。

 

それが「優しい人」という物語です。

 

この本の書評、前編とは打って変わった体裁になりますが、

読んで共感したこと、思ったことが多かったこの物語だけ一つの記事にしたいと思います。

 

前編はこちら↓

湊かなえ『ポイズンドーター・ホーリーマザー』読んだ感想・考察など ※ネタバレあり ~前編~ - ぽてちの本棚

 

 

 

「優しい人」

 

登場人物

奥山友彦:ただのコミュ障の男。樋口明日実に殺害される。

樋口明日実:「優しい」とレッテルを貼られた女性。人に無関心だから誰にでも優しくできる。

 

 

みなさんは、「優しさ」について考えたことがあるでしょうか。

 

私はよく考えます。

これまで考えてきた「優しさ」が、恐ろしいほどにこの物語に詰め込まれていました。

 

 

樋口明日実は、母親によって「優しい子」になれと躾られ、周囲から「優しい子」というレッテルを貼られるような子供に育てられてしまいました。

 

そう。優しい子に育てられてしまったのです。

 

 

 

「優しい」という言葉は、美しい呪いのようなものです。

 

かといって、人に優しくすることは、一般的には悪いことではありません。

 

 

躾けられたのであれ、自分で見つけた生き方であれ、

「優しさ」を意識して、「優しい」ことを行っていると、この人は優しいというキャラクターが確立されます。

 

「〇〇ちゃん/くんって優しいよね」

人に優しくしようと思って行動して、結果このような言葉をもらってうれしくない人はいますか?

 

いませんよね。

 

それが嬉しくて、「優しい」自分をどんどん前に出してしまう。

それがたとえ偽善であったとしても、

「優しい人」になりたいと思って、行動してしまう。

 

それが自分自身を苦しめることになるとは気づかずに。

 

 

そうして確立された「優しい人」というキャラクターは、

柔らかくゆるやかにその人自身を苦しみの渦に追い込むのです。

 

 

 

明日実は、昔から誰にでも優しくできる女の子でした。

 

手をつないで登校するのがルールなら、毎日鼻水を垂らして登校している男の子とも毎日手をつないだし、

胃が弱くて給食を食べた後にしょっちゅう嘔吐する男の子がいて、その吐瀉物の掃除係に任命されても文句ひとつ言わなかったし、

幼稚園の頃から同じ団地に住む、同性から嫌われるタイプの女の子と一緒にいても全く苦じゃありませんでした。

 

 

この明日実の姿は、私の中学・高校時代をみているようでした。

 

 

おいぽてち、お前はこの記事で自分が優しいとでも言いたいのか?

 

と思う人もいるかもしれません。

 

 

その質問には、肯定も否定もしないでおきましょう。

というのも、中学・高校時代の私の生き方の軸は「人に優しくすること」だったからです。

 

優しかったかと聞かれたら自信はありませんが、優しくないわけでもなかったと思います。

 

誰にでも話しかけるし困っている人には手を差し伸べる、一見すると「優しい」女の子だったかもしれません。

 

 

 

 

確か高校3年生の時、周囲からよく思われていなかった(とても最低ですが、容姿に関してブスとか言われていた)女の子のお母さんからお礼を言われたことがありました。

 

「うちの子とも優しく話してくれてありがとう」と。

 

その時はなんだか恥ずかしいような、うれしいような気持ちでした。

今思えばお母さんにこんなことを言わせるほど周囲の人間が腐っていたということになりますが。

 

 

そのあと、ふと「どうして私は人に分け隔てなく接することができるのだろう」と考えたことがあるのです。

 

当時、嫌われるのには慣れていたし、

自分がまたゴミ扱いされても失うものは何もないから、せめて誰かを救える人でいたい、という思いで「優しくなる」ことを生きる軸にしました。

 

でも、私はそれまでに3回くらい人間不信に陥っている人です。

 

私は心のどこかで人間という生き物を信じていませんでした。

 

信じたところで裏切られるから、そもそも信じない方がいい。

その方が、精神も擦り減らないし、苦しい思いもしなくて、ラク

そんな感情で、いつのまにか、「すべての人に無関心」になっていたのです。

 

 

「すべての人に無関心」だから、その場しのぎの優しさを与え、「優しい人」というキャラクターを作ってしまったのではないか。

この答えにたどり着いたのです。

 

私がふりまく「優しさ」はうわべだけを取り繕った「優しさ」で、

その中心には、実は恐ろしいほどに自己本位な本当の姿があると気づいたのです。

 

 

 

明日実は多分、人間って存在に興味がないんだと思う。深い関係を築くっていう前提がないから、逆に、誰にでも親切にできる。近寄ってきた人間は受け入れる。差し出されたものは受け取る。だけど、俺も含めて、相手はそう思っていない。

*1

 

 

 

 

「優しい人」にとっては、「優しい人」というキャラクターが確立されてからが本番です。

 

 

どんなに優しいことに気を使っていても、自分以外の他人にとってはその優しさが当たり前になっているのです。

 

だから、優しくない一面を見せたときに勝手に「裏切られた」と思われてしまう。

「どうして、これまで優しくしてくれていたのに」と。

 

 

我慢の緒が切れて素直に「嫌だ」と声をあげたときに、

「優しい子」というイメージが途端に崩れてしまう。

 

その「優しさ」がどれほどの我慢の上に成り立っているかなど想像もしないから。

 

 

実は「優しさ」の価値というものは、「優しい人」というレッテルを貼られた人が思っているよりも、とても低いところにあるのだと思います。

 

それほど「優しさ」というものは脆く、儚いのです。

 

 

優しさとはさりげない

それを知らぬ人がまた人を恨む

*2

 

 

一度「優しい人」になってしまったら、これからどんなことがあっても「優しい人」でいなければならないのです。

どんなに嫌なことがあっても。

なぜなら、周囲が「優しい人」と決めつけているから。

そんなに優しい人じゃないのに。

ただ、人に無関心でいるのが楽なだけなのに。

 

 

 

その場しのぎの優しさは、本当は優しさではない。

そう気づいてから、「優しい」と言われると「優しくないよ…」と思ってしまいます。

 

 

「明日実は優しいから」

久々に聞いた言葉だったが、昔と同じように素直に喜ぶことはできなかった。ふわふわのシュークリームを食べたと思ったら、クリームの中に砂利が混ざっていたような。そんな不快さが込み上げただけだ。

 *3

 

 

 

 

思いやりとか、人を傷つけないこととか、そういうことはもちろん大切だし、

自分の子供が生まれてきたときにも教えると思います。

でも、「優しさ」の苦しさを知っている母親は、きっと優しい子になれとは言いません。

 

「優しさ」の強要は、優しさではなく、呪いです。

 

 

これまた厄介なことに、優しいことは一般的には「いいこと」なのです。

 

だから、「優しさ」という強い光の下にある「我慢」は、闇を一層深くするのです。

 

そして「優しさ」のもつ美しい呪いは、今日もまた誰かを苦しめているのでしょう。

 

 

 

 

世の中は、全体の1パーセントにも満たない優しい人の我慢と犠牲の上において、かろうじて成り立っているのだと思います。

*4

 

 

 

 

 

今回この記事に綴ったのは優しさの究極解の1つにすぎないと勝手に思っています。

 

「優しさとは何か」

この問いに対する答えを見つけるのは、まだまだ先になりそうです。

 

 

みなさんも一度、自分の「優しさ」の答え合わせをしてみませんか。

 

 

ポイズンドーター・ホーリーマザー (光文社文庫)

ポイズンドーター・ホーリーマザー (光文社文庫)

 

 

*1:湊かなえ「優しい人」『ポイズンドーター・ホーリーマザー』2018年、173-174頁

*2:Pascal/AquaTimez 収録アルバム『アスナロウ』

*3:前掲1、172頁

*4:前掲1、186頁

湊かなえ『ポイズンドーター・ホーリーマザー』読んだ感想・考察など ※ネタバレあり ~前編~

 

こんにちは。

今日は以前読んだ、湊かなえさんの『ポイズンドーター・ホーリーマザー』に関する感想や考察を書いていこうと思います!

この前の『ユートピア』の感想はネタバレありませんでしたが、

本日はネタバレありますので、注意してください。

 

sugarpotato.hatenablog.com

 

 

 

◇◆◇本の概要◇◆◇

この本は、6作品が納められた短編集。本のタイトル『ポイズンドーター・ホーリーマザー』は、当作品の最後の短編「ポイズンドーター」「ホーリーマザー」の二つからきている。

収録作品は以下の6つ。

「マイディアレスト」

「ベストフレンド」

「罪深き女」

「優しい人」

「ポイズンドーター」

ホーリーマザー」

 

 

一つずつ考察していきます。

作品を読んでいる前提の考察になってしまいますがお許しください。

それぞれの作品の概要は簡単に書きますね。

ネタバレがあるので、苦手な方はここで読むのをお控えください。

 

 

 

 

「マイディアレスト」

概要

事件に巻き込まれてしまった妹のことを話す、6つ年上の姉の目線で物語が進む。

妹は妊娠していたが、町で妊婦を狙った暴行事件が多発していたその時期に、深夜外出中に殺害されてしまう。

 

妹がいなくなったと気づく直前、何をしていましたか?

「――蚤取りをしていました。」

 

この言葉がすべての真相といっても過言ではない。

 

親に厳しく育てられた姉と、甘やかされて育った妹。

 

男性との交際を許されてこなかった姉は、家族といても疎外感を感じている。

唯一の癒しはネコのスカーレット。通称、スカ。

 

姉はスカの蚤取りをよくしてあげている。

特に、卵で腹を膨らませた蚤をつぶすのは、プチンとはじける音が心地いいので夢中になってやってしまう。

 

 

 

事件のあった夜、妹と一緒に散歩に行くと、部屋にいるはずのスカがなぜか外にいた。

妹がスカを外に出してあげたのだった。

 

姉が知らない間に、スカにも愛すべき猫(恋猫とでもいうべきか)ができていた。

ちょうど交尾に出くわしてしまったのである。

 

スカが襲われていると思った姉は近くの角材を拾ったが、妹に「スカはちっとも嫌がってないよ」と言われてしまう。

 

姉はスカーレットがそんなことをするはずがないと思った。

しかし指先に力が入らなかった。

唯一の理解者だと思っていたスカに裏切られたことがわかって、絶望していたのだろう。

 

 

「あーあ、スカーレットに先越されちゃったね」

そう言ったのは、巨大な蚤(=妹)だった。

角材を思い切り振り上げて、蚤の腹に打ち込んだ。そして、最後に頭を潰した。

 

 

 あの夜、姉は確かに「蚤取りをしてい」たのである。

 

 

 

感想・考察

怖いですよね~(笑)

読んでいる最中に、もしかして姉が…と思ったのですが、それでもゾッとしました。

 

マイディアレスト(My Dearest)。

意味は、「親愛なる人」とでも訳せるのでしょうか。

 

・妹を殺す最中も、姉はスカーレットのことを考え、力をもらっていること

・妊婦である妹を殺害したことを「蚤取り」と言っていること

 

これらのことから想像すると「マイディアレスト」はスカーレットのことなのでしょう。

 

そして、いくつか前のページで、スカーレットに「害虫は取り除いてやるからね」と言っている姉。

これは妹も「害虫」ということですよね。

 

物語中によく出てくる「般若」というのは、おそらく長年自分のことを馬鹿にしてきた妹と母親の像。

この般若が出てきたとき、姉は衝動的な行動をとりがちです。

妹を殺した時もそうでした。

 

自分を苦しめてきた妹や母親の像が般若となり、病気的に愛猫の蚤取りをしている姉。

理解者であると思っていた愛猫の交尾に遭遇し、妹に馬鹿にされた姉は衝動的に妹を殺してしまいます。

 

姉は、かなりプライドが高い人物として描かれています。

そんな人物が、①信じていた愛猫の裏切り、②妹からの軽蔑を立て続けに受け、妹だけを殺したのは、スカーレットのことを自分の分身だと信じていた(p.36)からでしょう。

 

 

 「ベストフレンド」

概要

脚本家を目指す作家3人の話。

 

脚本新人賞

最優秀賞 「サバイバル・ゲーム」大豆生田薫子(まみゅうだ・かおるこ)

優秀賞  「月より遠い愛」漣涼香(さざなみ・すずか)

     「それからの秋、終わりの冬」直下未来(そそり・みらい)

 

漣涼香の目線で語られる物語で、この新人賞受賞式をきっかけに3人は連絡先を交換する。

涼香は最優秀賞を取った大豆生田に、敵対心を持ちつつもメールではいい人を装って交流していた。

 

大豆生田は、デビュー当初の成長は芳しくなかったものの、賛否両論を生む結末で話題になり、徐々に有名になっていった。

涼香はそんな大豆生田の姿を妬ましく思う。

 

 

大豆生田脚本の映画が銀の鈴賞という賞を受賞し、その映画祭の帰り道に事件が起こる。

涼香は大豆生田が空港のロビーに出てくるのをみると、バラの花束を胸の前に抱え直して大豆生田の前に駆け寄った。

その刹那、後ろに気配を感じ視線をやると、ナイフがちらついた。

ナイフを持っていたのは直下未来だったのである。

 

涼香はとっさに大豆生田をかばうようにして倒れた。

大豆生田に伝えたいことがあったが、それを言う間もなく死んでしまった。

 

そして、大豆生田の回想が始まる。

エゴサをしたら、「月にほえろ」というタイトルのブログで自分に対する誹謗中傷を見つけたこと。

そのブログの内容から、勝手に漣涼香のものであると断定してしまったこと(実際は直下のものだった)。

最後に罪滅ぼしのように、涼香本人のブログの記事を取り上げている。(以下引用)

 

『悔しい、悔しい、悔しい。だが、この悔しさが私を脚本の世界に留めてくれている。夢をあきらめるなと誰よりも強く語りかけてくれるのは、大豆生田薫子なのだ。親友とは、このような存在のことをいうのではないか。親友を得たことを心の底から幸せに思う。この思いを伝えるために、彼女に花を届けよう。そして言うのだ。出会ってくれてありがとう、と』

*1

 

 

感想・考察

この物語は

直下が大豆生田に恨みをもって殺そうとしていた。

そこに涼香が現れ、殺されてしまった。

という解釈ができますね。

とても単純です。

 

しかし、この物語の作者は湊かなえさんです。

直下さんの話はあまり物語中に出てこなかったので、殺そうとした人が直下さんであることには少し驚きましたが、それでも直下さんがいつか出てくるだろうな、くらいのことは予測はできたはず。

 

湊かなえさんの物語だから何か裏があるはず!

そう思っていろいろ考えました。

するとある一つの可能性にたどり着きました。

 

 

結論を急げば、

直下は漣涼香を殺す目的で、事件当日もあの場所に来ていたのではないかと思うのです。

 

以下に自分の考察を落とします。

 

 

 

物語の間あいだには、誰のものかはわからないが大豆生田に対する侮辱的で冷酷な一言がいくつか挟まれています。

 

具体的には、『田舎者はさっさと諦めろ』『プロットの書き方がわかんないとか、脚本家、舐めてんの?』などといった言葉です。

 

これは読者が想像するしかないのですが、おそらく直下のブログに書かれてあったのでしょうね。

 

作中には、大豆生田と涼香がメールでやり取りする場面ももちろんありますが、直下と大豆生田が連絡を取っていることが垣間見える内容が、大豆生田から送られてきたメールで判明します。

 

大豆生田は涼香に、直下と連絡を取っていることをわざわざ話しているということは、つまり、大豆生田は直下にも涼香の近況を伝えている可能性があるのです。

 

大豆生田は最優秀賞に選ばれ新人プロとして活躍、涼香はプロットを会議に持ち込んでもらえたりと、順調な様子を知った直下は、一人劣等感を抱えたのではないでしょうか。

 

自分で推測しておいてなんですが、直下が涼香を殺す動機は正直判りません。(笑)

 

でも、大豆生田と涼香、どちらでもよかった、あるいはどちらにも苦しみをみせたかったと考えると、

 

大豆生田は有名になりすぎて警備体制が整っている。

彼女を殺すことはできないが、その状況を利用して涼香を殺そうとした。

 

つまり、ブログも涼香が書いたように見せかけて大豆生田をあおるような文章を書きつつ、涼香本人のブログも特定し、読んでいたのではないでしょうか。

 

だから、涼香の感情の変化と、直下のブログ(と思われる)の冷酷な一言が妙にぴったりと当てはまっていた。

 

涼香のブログを読んでいれば、おのずと映画祭後の空港に涼香が来ることも分かったのであろう。

直下は屈辱を晴らそうと、あえて大豆生田と涼香の二人がそろったところで犯行をおこなった。

 

 

大豆生田を標的にしていたら、直下は涼香のあとを走ってきて殺さないと思うんです。

涼香は大豆生田に覆いかぶさるようにして倒れたとありますが、それさえも直下の計算下にあったら…と考えました。

 

私の考察はこんなところです。

真相はわかりませんが、この物語は単純に解釈するべきものではないと感じます。

 

あくまでも私のただの考察なので、うのみにしないでくださいね( ;∀;)(笑)

 

タイトルは「ベストフレンド」ですが、

本当のベストフレンドとは何なのでしょうね…

 

この物語に出てくる三人をみていると、何も信じられなくなります。

涼香にとって大豆生田は本当にベストフレンドだったのか。

今でも真相はわかりません。

 

 

罪深き女

概要

この物語は結構まとめるのが難しかったので簡単に書きます。

 

登場人物

黒田正幸:「ミライ電機」店内で無差別事件を起こし死傷者15名を出した容疑者。

天野幸奈:中学時代、黒田正幸と同じマンションで暮らしていた女

天野家の母親:シングルマザーで幸奈に男子との交際を認めない。

黒田家の母親:?

 

 

天野幸奈視点

幸奈が中学生の時の話。

黒田正幸はネグレクトを受けていて同情をしてしまう年下の男の子。

黒田家族が住む階上からは物音もしないから、母親も帰ってきていないようだ。

一方的に話しかけているうちに、すこしずつ正幸と打ち解けられた気がして、弟のような存在だと勝手に思っていた

 

正幸の母親は、子供を放っておく最低な母親だと思っていた。

だから、自分が正幸を助けるのだと、幸奈の母親の目を盗んでは世話を焼いていた。

 

ある正月の日、初詣で正幸がお母さんと手をつないで歩いているところに遭遇した。

正幸の母親は、幸奈の母親に「今度結婚することになって、引っ越すんです」という旨を伝えた。

 

それからしばらくして、正幸の母親が何者かに襲われて顔に重傷を負った。

幸奈は因果応報だと思っていた。

 

幸奈が母親と喧嘩した日、外に出ると正幸がいた。

正幸に「助けて」といったら、その夜マンションが火事になった。

 

幸奈は寝ていたが、外から男の子の声で「おねえちゃん!」という声が聞こえたから、正幸が助けてくれたのだと思った。

 

火事では、幸奈の母親と、正幸の母親が犠牲になった。

 

それから数年がたって、無差別事件が起こる数日前に「ミライ電機」で正幸と遭遇。

正幸に数年ぶりに出会えたうれしさに自分の幸せな近況ををぺらぺらと話してしまうが、正幸は幸せでなかったから裏切られた気持ちになったに違いない。

 

もしかすると、幸奈に恋心があって唯一信じられる人だったのに、その人に裏切られた絶望感から彼が今回の事件を起こしたのだと思う。

 

すべて悪いのは私だから、私を罰してください。

 

 

黒田正幸視点

中学生の時。

母親から放置されていたことは一度もない。

 

階下に住む天野幸奈の母親から執拗な嫌がらせを受け、正幸の母親は気配を消して生活するようになったのである。

そして、正幸の母親の交際相手も、正幸を大切にしてくれていた。

 

優しかった母親が変貌したのは、顔に怪我を負わされた上、職場に母親と交際相手の児童虐待を告発する文書が数回届いたことから、交際相手がノイローゼ気味になり婚約破棄になった頃からである。

 

この一連の犯人は幸奈の母親であると疑っている

 

火事が起きた時、放火をしたのは正幸だが、母親からの暴力に耐えかねたことが理由であり、幸奈は全く関係ない

 

 

そしてついこの間、家電ストアで幸奈にあったことは覚えているが、幸奈だとは気づかず、頭のおかしい女が急に話しかけてきたと思っていた。

 

犯行の動機は「運の悪い人生に嫌気がさしたから」である。

 

 

 

考察・感想

この物語における天野家の娘と母親は、思い込みが激しい部分があります。

 

幸奈は特に、一方的に想像しただけの正幸の境遇や気持ちを、まるでそれが正解のように語っています。

その姿にはかなり気色の悪い印象を受けました。

 

幸奈視点と正幸視点で矛盾している点は数々挙げられますが、この主観同士のぶつかり合いでは、どこまでが本当でどこまでが嘘かはわかりません。

しかし、正幸の人生は「女」によって変えられてしまっていることがわかります。

 

 

幸奈は正幸との関係を述べた最後に「私を罰してください」と言っていますが、絶対思ってないですよね(笑)

 

懐かしい、正幸との二人だけの思い出に酔っているようにみえます。

二人だけの秘密をこれ見よがしに話したいだけです、きっと。

疑いすぎですかね(笑)

 

そして、この幸奈の一方的で気持ち悪い話を聞かされた正幸は、取調室で唯一もっている権利「黙秘権」も剥奪されてしまいます。

 

変な言い方かもしれませんが、幸奈の話を聞くまで黙秘を続けていて、幸奈の話でどうしても訂正したい場所があって口を開いたということは、幸奈に黙秘権を剥奪されたとの解釈もできるのではないかと思います。

 

正幸の母親が暴力的になったのも、もしかすると天野家の母親のせいかもしれないし、その娘は気持ち悪いくらいの世話を焼いてくる。

そしてもう関係の途切れた数年後の取調室においてもまだ、天野家の人がかかわってくる。

 

完全に不運としか言えないですよね…

 

 

タイトルの「罪深き女」。

 

それは正幸の母親のことではなく、

きっと天野家の母親のことであり、また、取調室まで間接的にでも付きまとってきた娘幸奈のことでもあるのでしょう。

 

それにしても、過去の人間に狂わされた正幸が無差別事件を起こした店の名前、

「ミライ電機」だなんて…

皮肉ですね。

 

それとも、一つ前の話の犯人「直下未来」さんと何か関係があるのでしょうか(まあ、ないでしょう)。

 

 

中編へ

長くなってしまいそうなので、まず初めの3つの物語について考察をしてみました。

続きは中編・後編で書きます!

 

 

sugarpotato.hatenablog.com

 

 

ここまで読んでいただきありがとうございました。

 

 

 

こちらの本は、かわいらしいクマの人形が印象的な表紙。

姉と妹、母と娘、男と女…それぞれの心情がエッセンスとなって、物語を深くしていきます。

 

ポイズンドーター・ホーリーマザー (光文社文庫)

ポイズンドーター・ホーリーマザー (光文社文庫)

 

 

 

 

 

 

 

*1:湊かなえ「ベストフレンド」『ポイズンドーター・ホーリーマザー』光文社、2018年、97頁

東野圭吾原作『マスカレード・ホテル』 小説 あらすじとトリックの徹底考察・感想 ※ネタバレあり

あけましておめでとうございます。

今年も良き一年になりますように。

 

私は年が明けて、プライベートが一段落したのでほっとしています。

 

小説を読む時間も確保できたので、これからたくさん小説を読んでいきたいです。

 

さて、年末の話ですが、東野圭吾さんの『マスカレード・ホテル』を読みました。

 

本屋さんで初めて知ったのですが、来たる1月18日にこの本を原作とした映画が公開されるのですね!!

木村拓哉さんと長澤まさみさんが主演のようですが、小説を読んでめちゃくちゃ適役なお二人だと思いました。(笑)

 

知人に聞いた話ですが、東野圭吾さんは木村拓哉さんをイメージしてこのお話を作ったという説もあります。

 

東野圭吾さんの小説にしては、たしかにドラマ的というか、フィクション感の強い物語で、映画のために書き下ろしたのかなーとか考えましたが、内容はやはり東野圭吾さん!といった感じで、とってもとっても面白くて本をめくる手が止まりませんでした。

 

映画の広告動画も拝見しましたが、原作読んでいても見に行きたくなりました。

金欠なので1月はお預けになりそうですが…

 

 

これまでのように本の内容を詳しく書いていたのですが、私は小説が大好きなので、本を一人でも多くの人に手に取ってもらうためにも(誰)、詳細を書くのはやめました!

 

せっかく著者の方が多大なる時間と労力をかけて完成させたとっても面白い物語を、

才能ナシの私が順を追ってブログで全部説明してしまうって…

 

すごく申し訳ない気がしてきたので、読んでない人にはわかりづらい(絶対に何を言っているかわからないと思います…すみません)かもしれませんが自分が日記として記録しておきたいところだけ抜粋して記録しておきます。

 

 

この記事は、ネタバレを含みます

一応ネタバレがある場所からはもう一度注意書きさせていただきます。

 

苦手な方、映画をネタバレなしに楽しみにしている方などいらっしゃいましたら回れ右でよろしくお願いいたします。

 

 

 

 

あらすじ

都内で起こっている連続殺人事件。

これまでの3つの現場には数字の暗号が置かれており、次の現場は「コルテシア東京」という一流ホテルであることが判明した。

そこで、刑事たちによるホテルでの潜入捜査が決定。事件を未然に防ぎ、犯人を逮捕することが目的である。

 

頭もキレるがプライドも高い若き刑事、新田浩介はホテルのフロントクラーク(受付)として潜入することに。

その指導役に抜擢されたのが、このホテルでも仕事ぶりが認められている山岸尚美であった。

 

ホテルの従業員は潜入捜査の事情を詳しくは知らない。

どうしてこのホテルで事件が起こると予想されているか、という点すらも教えてもらっていないのである。

 

しかし山岸尚美は、新田の担当ということもありホテルの上層部から暗号のことを少しだけ教えてもらった。

ただ、その暗号が数字であるということまでは知らなかった。

 

潜入捜査が始まった。

新田は、「お客様がルールブック」であり、どんなクレームが入ってもお客様を第一に考えるというホテルマンの姿勢に反感を持っており、また山岸尚美も、刑事特有の新田の目つきや態度をよく思っていなかった。

 

不審な客が次々と現れる中、二人は事件の渦中の人になっていく――

 

 

 

第1のトリック

1つ目のトリックは電話を使ったものでした。

これは、栗原という人物がホテルに泊まった時に解明されますね。

 

栗原:新田が高校生の時に、教育実習生として来た英語の先生。帰国子女の新田に英語の発音の差をまざまざと見せつけられたことで、栗原は英語の先生になることをやめる。

 

トリックのネタバレをみたくない方は「第2のトリック」へ。

 

 

 

第1のトリックネタバレ

このトリックが使われていた事件は第一の事件。

被害者の同僚の手嶋という男と、手嶋の元カノの友達がグルだったという話。

このトリックが解明される前の手嶋のアリバイはこうでした。

 

被害者の死亡推定時刻の時間帯に、元カノから電話がかかってきた。

元カノと付き合っていた当時は手嶋は固定電話だったので、今回も固定電話に電話がかかってきた。

これは通話記録も残っている。

そして、元カノの証言も、元カノの友達の証言も一致していた。

手嶋の家から殺害現場までは1時間ほどかかり、犯行は不可能なのでアリバイが成立していた。

 

しかし、真実は次のものでした。

 

手嶋と元カノの友達がグル。

 

手順① 元カノの友達(以下 井上)は、元カノ(以下 本多)の家に行ったときに隙を見て

本多の携帯に登録されている手嶋の電話番号を、殺害現場付近に用意した別の番号に書き換える。

 

そして、元カレへの未練がある本多の気持ちを利用して、手嶋に連絡するようにそそのかし、電話をさせる。

 

これは少なくとも女性ならわかると思うのですが、友達がいてくれるときに好きな人へのメールの内容を相談しながら送ってしまうやつの電話版です(笑)

 

電話に出た手嶋は殺害現場近くにいますが、電話している側からはどこにいるかなんてわかりませんよね。

携帯電話に登録した番号をいちいち確認して電話をかけることはそうそうありません。

その心理を利用していたのです。

 

 

手順② 書き換えた電話番号を、隙を見て手嶋の家の番号に戻して、もう一度発信する。

 

手嶋の家の電話では、留守番電話サービスに接続されていたものと思われます。

電話の時間ですが、通話記録は2分、手嶋の証言は5分となっていたことから、手嶋が通話記録の2分という不自然さをごまかすためにわざと長めの時間を言ったものと推測されました。

 

 

手順③ 本多が手嶋にかけた偽の場所への発信履歴を消しておく。

 

これでアリバイ工作は完了です。

結局、警察の捜査によってアリバイが崩れました。

新田の予想通りのアリバイ工作がなされており、消された通話履歴も復元されました。

 

 

 

第2のトリック

第2のトリックは、ミスディレクション的な要素が強いトリックでした。

これには読みながら鳥肌が立ちましたね。

判ってしまえばとても単純なトリックですが、なかなか思いつかないのではないでしょうか。

 

これは、山岸が有名人のアバンチュールについて話しているときにヒントを得ます。

 

 

ここから先はネタバレになります。読みたくない方は、「暗号の解読・犯人は…?」へ。

 

第2のトリックのネタバレ

じつは、連続殺人事件はそれぞれの事件が全く違う人物によって犯行されていたものだと判明しました。

闇サイトで殺害欲のある人物を募り、この一連の事件を企てたのが「x4」という人物で、これまで3つの事件は「x1」「x2」「x3」という人物によって行われました。

この4人は頻繁にやり取りをしており、そのメールがx2の自宅のパソコンから出てきたことによって、連続殺人事件が1人の犯人による犯行ではないと判明したのです。

 

つまり、この連続殺人事件には、これから起こるホテルでの事件を含めて4人の犯人がいるということで、4人目の犯人がすべての総括者でした。

 

 

新田とその相棒的な位置の能勢刑事はこの連続殺人事件について、おかしな点に気づきます。

 

1.殺害方法がすべてばらばらであること。

→同一犯による犯行に見せるためには、殺害方法を統一するのが良い。このx4はとても頭がキレる人物であると推測されるため、どうして殺害方法を統一しなかったのか疑問が生じる。

 

2.x1・x3・x4はネットカフェからメールをやり取りしていたのに対し、x2だけ自宅のパソコンからメールしていたこと。

→x4が全員の犯行を完全犯罪にする(つまり、架空の同一犯による犯行とみせかけ、捜査を攪乱させる)ことを目的とするならば、足取りがつかめてはならないため犯人全員にネットカフェでメールをやり取りするようにまず忠告するはずなのに、それをしていない。わざわざそんな危険なことをする理由がわからない。

 

これはつまり全員の犯行を同一犯だと思わせることが目的ではない。

 

むしろ、全員犯人が違うとばれても構わない。

x4の狙いはもっと別のところにある、と新田は推測しました。

 

以下は新田の推測です。

 

連続殺人事件の構造が警察にばれることはふつう、犯人にとって不都合なことであるが、ある条件を満たしたときに好都合なことになる。

その条件とは、「x4がもう一つ別の殺害計画を持っていること」である。

 

x4に殺害したい人物が2人いる場合、単純にその2人を殺害してしまえばすぐにx4が重要参考人として挙げられてしまう。

 

だから、その2つの事件を警察が結び付けて考えないようにするため、一方の殺人を、全く別の殺人事件と結びつけてしまうという方法をとった。

具体的には、現場に暗号を残すという方法で、警察が連続殺人事件として捜査を進めるようにしむけたということ。

 

現に連続殺人事件として捜査しているなかの1つの事件は、実は他の所で起きた事件とペアになっているかもしれない―――

 

 

このトリックは、山岸が話した有名人のアバンチュールで

「グループで泊まっているうちの誰か一人が、実は別の誰かとカップルだなんて、普通思わない」

という発言から見破られました。

 

本当に、よくできたトリックですよね…!感動しました。

 

 

暗号の解読・犯人は…?

暗号や、気になるx4の正体ですが、ネタバレしませんよ!

ぜひ、自分で予想しながら読んでみてください。

 

本を読んでも、映画みたくなることまちがいなし!です!!

 

推理小説が大好きな私も、まんまと騙されました。

読者の意識を完全にそらすのがうまい…!

東野圭吾さん、大好きです。

 

 

マスカレード・ホテル (集英社文庫)

マスカレード・ホテル (集英社文庫)

 

 

 

 

この物語の前日譚『マスカレード・イブ』も買ってしまいました。

『マスカレード・ナイト』もハード本で出ていますね。

お金をためてハード本で買いたいです。

 

マスカレード・イブ (集英社文庫)

マスカレード・イブ (集英社文庫)

 

 

 

マスカレード・ナイト

マスカレード・ナイト

 

 

 

映画も絶対に面白いと思いますが、

まずは本で読んでほしいです!!

(※お金をもらった本の紹介ブログとか、集英社さんの回し者とかではないです。笑)

 

理由ですが、

読者の手を止まらせない仕組みが確立されているんです。

 

何を言っているんだ…?って思うかもしれないのですが、

この後物語が進展する…!!というタイミングで、必ず本をめくるような構成になっているんですよ。

 

これはどの作家さんも意識しているらしいのでいつも意識して読んでいるのですが、この本は特にそれを感じました。

本当にすごい…感動しました。

 

すごいメタい話になってたら申し訳ないのですが、本の面白さってこういうところにもあると思うんですよね。

なので、もしお金に余裕がある方、少しでも興味を持っていただけた方はぜひ購入して読んでいただきたい一冊です!

 

それに、この物語はとても読みやすい本だなと思いました。

本が好きな人はもちろん、苦手な人も、複数の登場人物によってトリックが丁寧に解説されるので理解しやすいのではないかと思います。

 

最後にもう一度、ニートの味方Amazon様に販売されている『マスカレード・ホテル』のURLを貼っておきますね。

 

本好きも、苦手な人も楽しめる1冊だと思います!

 

 

マスカレード・ホテル (集英社文庫)

マスカレード・ホテル (集英社文庫)

 

 

 

辻井南青紀『蠢く吉原』あらすじ、読んだ感想 ※ネタバレあり

こんばんは。

今日は辻井南青紀さん『蠢く吉原』を読んだので、その感想を書きます。

こういうブックレビューみたいなのを最近はじめてみましたが、自分のブックダイアリー的な意味を込めて書いているだけです(^^)/

 

この本は表紙に惹かれて気づいたら手にしていました。まあ、私が江戸時代の色街が好きだという要素も大きいのかもしれませんが…

吉原と言えば、江戸の花街ですよね。吉原は大火によってその場所を移転したらしいです。昔の吉原は今の日本橋人形町あたり、新しい吉原は今の浅草千束町あたりに移転しました。前者を旧吉原、後者を新吉原といいます。

この物語は新吉原での物語です。

 

あらすじ

簡単に書きます。

 

主人公はお七平太、男女です。

2人とも小さい頃身を売られて江戸に来ました。

お七と平太は、大きくなったら必ずまた会うと約束して離れ離れになりました。

 

お七は大きくなって吉原の花魁になりました。源氏名は「司」。

平太は材木問屋で奉公人をした後、無宿人となって自分の手一本で過ごしていました。でも平太は力持ちだったので、仕事はいくらでもありました。

桜の咲く季節に毎年行われる隅田堤の力自慢大会では、江戸時代開幕以来誰も持ち上げたことのない70貫の石(約260㎏)を持ち上げ、平太の力持ちは江戸中で噂になりました。

吉原の女中もそのお祭りに来ていました。というのも、江戸で有名な絵描き「市右衛門」が、怖い金持ちの「弥平」(後々物語のもう一人の重要役になる)に、司という花魁を紹介する席としてそのお祭りを選んだからでした。

そこで司(お七)と平太は一度顔を合わせるのですが、そこではまだ気づきません。

弥平は司の美しさにあてられて、その夜司と仕舞をつける(一晩買切る)ことに決めました。

 

いろいろあって吉原には平太も顔を出しました。司は今日の客弥平よりも、同じ席にいた平太が気になったので、弥平と二人になった時理由をつけて部屋を抜け出し平太を探し出しました。

そこで平太は司がお七だと見抜き、お七は平太だとわかったのです

でもその時点で、司は弥平に身請けされることが決まっていました。ほんの数分前にきまったことでした。身請けというのは、お金持ちの旦那に自分(遊女)を買い上げてもらい、遊郭での暮らしから普通の暮らしになることを意味します。

平太はそれでもお七に会いに行くと約束しました。

 

お七は身請けされましたが、少ししてから平太が迎えに来て、二人で逃げ出しました。お互い、二人でなら死ぬ覚悟もできていました。というか、このまま二人で生きて添い遂げることは、色んなところに口や顔の利く弥平からは困難だったため(見つかったら離れ離れ)、死ぬしかありませんでした。

一度江戸を出ますが、また江戸にもどってきます。自分たちが死ぬ場所は江戸だと思ったからでした。2人は、平太が寝泊まりしていた長屋で毒を飲み、刺し違えました。しかしそれを弥平の手下が見つけ、間一髪のところで二人とも命を取り留めました。

 

このように、心中することを「相対死」といいます。二種類あって、二人で刺し違えて同じ場所で死ぬか、違う場所でも同じ時間を約束しあって死ぬか、の二つです。相対死できず二人生き残っていたら、男は非人として罪人の刑執行に携わり、女は遊女へ逆戻りでした。1人だけ生き残った場合は、その人は死罪となります。

 

そのままいけば二人は一生非人と遊女の人生でしたが、なんやかんやあって2人は弥平に買われ、町人にもどりました。お七は弥平のもとでほぼ監禁みたいな生活を送りました。弥平は平太に強く嫉妬していたので、生き地獄を味わわせるために生かしました。

 

2人が町人に戻ってからは、お七と平太は一度も顔を合わせていませんでした。平太は行方知らずになったので、その生死さえ不明でした。

お七は隅田堤の力自慢を毎年見に行っては、平太がその大会に出ていないことに落胆し続けていました。月日がたち、また桜の舞う季節になりました。お七は生きているか死んでいるかわからないくらいにやせ細ってしまいましたが、お花見に行きたいという気持ちだけは持っていました。だから、この年も力自慢を見に行きました。

大会には、なんと平太が出ていました。弥平はずっと彼の行方を追っていたので、「今ここで抜刀してお七と俺が命を絶ったら、平太に生き地獄を見せられる」そう思ったのですが、そんな勇気は弥平にありませんでした。

平太とお七は、力自慢の舞台と観客席にいながら、お互い強く目を合わせて頷き合いました。

お七は帰り道、これまでの元気のなさが嘘のように足取り軽く歩いていました。弥平はお七の足の速さに追いつけず、行き交う人の波にもまれてとうとうお七の姿を見失ってしまいました。

 

夜の帳が降りたころ、弥平に知らせが入りました。

大川橋のたもとに1人の女が首を切って自殺しているのが見つかったと。お七でした。その対岸には、小柄だががっしりとした男(平太)が同じく首を切って自殺しているのが見つかりました。

2人は相対死を遂げ、あの世で夫婦になれたのでした。

 

感想

心中ものを読んだのはこれが初めてでしたが、とてもすっきりしました。

 

あらすじには省いていますが、平太とお七が江戸に来た時の描写で、大川(隅田川)橋の下に女の死体が浮いている描写があります。そこで平太は「絶対にこんな風にはならない」と誓っているのです。

また、お七が花魁になれたいきさつとして、それまでの吉原の花魁「奥州」が役者下がりの男と心中未遂をして死にきれず、大川橋の端と端に晒し者になり、その代わりとしてお七が花魁になった、というものがあります。

そしてお七と平太も、同じ場所に晒し者になったのですが、その場所で相対死したのです。

また、小さい頃に「また必ず会おう」と二人が約束したのも、またこの橋の上でした。

 

駆け落ちの時に江戸から出て、死ぬ場所が江戸であると思って引き返したのは、もしかしたらこの橋を思い出したからかもしれません。

平太の誓いは叶わず、皮肉にもその誓いを立てた橋の下で、同じような姿でお七と共に亡くなりました。

 

このように、『蠢く吉原』という本の中で大川橋はとても大きな役割を果たしていました。これ以外に橋は出てこなかった気がします。

ちなみに、大川橋というのは現在の吾妻橋です。何度も訪れたことがあるし、私自身も好きな風景だったので想像しながら読むことが出来ました。

 

ちょうど私が今年の春に撮った吾妻橋隅田川沿いの桜並木があったので載せます。

 

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吾妻橋上からの景色

 

 

この場所はかなり有名ですよね。

浅草に行くと必ず渡る橋だと思います。

 

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吾妻橋全体



 

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隅田川沿いの桜並木

私は、川って昔からなかなか変わらないので好きですね。

川を見ると、江戸時代の人も同じこの流れを見ていたんだな~とか、考えずにはいられません。

 

物語の話に戻ります。(笑)

 

個人的に、弥平が気に食わなかったので最後(あらすじでは省きましたが)因果応報をくらって本当にすっきりしました~(笑)

気になったのは、市右衛門の行方と彼が描いて世間を賑わせたという絵図ですね。相対死を遂げようとする男女と、その二人を地獄に突き落とす男の絵が描かれていたということですから、多分お七と平太、そして弥平のことですよね。

その絵を見た人はあまりの凄惨さに意識を失うとか、その絵に憑かれてずっと見入っているとからしくて、それが物語の中で、どういう位置づけなのか…というのをあまり考察できませんでした。

お七と平太の深い絆と、他人から見た弥平の姿の酷さを客観的に捉える一つの指標なんですかね。

 

やっぱり遊郭を舞台にした小説って心中もの多いですよね。実際にも心中は多くあったみたいです。それをパロディにして歌舞伎とかで演じていることも珍しくないとか…

 

愛と憎の激しい物語でしたが、個人的には最後は二人が結ばれてよかったです。

気になった方は是非読んでみてください(^^)

 

最後にリンクを載せておきます。

本日も長文読んでいただきありがとうございました!

 

 

蠢く吉原

蠢く吉原

 

 

湊かなえ『夜行観覧車』 原作 犯人 ネタバレ、感想、考察!

こんにちは。

今日は湊かなえさんの小説夜行観覧車の感想を書かせていただきます。

ネタバレ含むので苦手な方はお控えください。

 

 

あらすじ

高級住宅地ひばりヶ丘に住む遠藤家・高橋家・小島さと子の3家の視点で物語が進む。

これはたった3日間ほどの出来事がまとまった作品。

7月4日零時頃、高橋家の主人高橋弘幸が救急車で運ばれる。その後死亡。その妻高橋淳子が自首し、自分が殴ったと供述している。

高橋家には夫婦の他に子供2人が暮らしているが、姉の比奈子は友達の家にお泊りをしていたため不在。弟の慎司は事件が起きたとされる時間、勉強の気分転換にコンビニに行っていたため不在、その後行方不明。慎司がこの時間にだけコンビニに行っていたこと・その後行方不明であるのが不審であることから、一部では慎司が犯人で、それをかばうために母親が嘘をついているとの見方もあった。

 

遠藤家

遠藤啓一:一家の主。事なかれ主義で、毎日平和に暮らすことだけを考えている。

遠藤真弓:啓一の妻。昔から家にこだわっている。彩花に期待していない。

遠藤彩花:私立受験を失敗してから卑屈になり、癇癪持ちになる。「坂道病」にかかる。市立A中学校に通う。

 

高橋家

高橋弘幸:医者。温厚な人物で、子供に勉強を押し付けたりせずやりたいことをやりなさいと言う。

高橋淳子:弘幸の妻。弘幸のいうことに従順で、人を殺すような人間ではない。

高橋良幸:高橋家の長男。医者のたまご。弘幸と前妻の間にできた子供。前妻は交通事故で亡くなり、淳子と結婚した際にひばりヶ丘に引っ越す。現在は関西の大学にいるためひばりヶ丘の実家にはいない。

高橋比奈子:彩花が受験失敗した名門S女子学院高等部に通う。「鈴木歩美」と仲が良く、事件当夜もこの友達の家に泊まっていた。

高橋慎司:進学校の私立K中学校に通う。彩花と同い年。バスケ部で、顔立ちも良いため他の学校でも噂になるくらいの人物。自分はそんなに頭が良くないのに、母親から勉強を強要されたり医者になるのを無理やり進められたりすることに嫌気がさしている。

 

小島さと子

近所に住むおばさん。よくいる感じの情報通の人。家族の実態はあまり明らかにされないが、夫はほとんど家に帰ってきていない。息子夫婦は海外赴任で現在海外にいるが、さと子を嫌って日本に帰っても嫁さんの方の実家に行くと言っている。

 

犯人と動機

犯人は、明記されていないが高橋淳子であると考えるのが妥当。

動機を伝えるには事件当夜の高橋家の様子から書かなければならない。

 

事件が起こる数時間前、学校から帰宅した慎司は、バスケ部の最後の試合をかけた(母親と「30位以内に入らないと最後の試合は出さない」という約束をしていた)模試がある明日に向けて勉強をしようとするが、集中できない。

なんとなく手元にあったバスケットボールを壁にぶつけると、とても気持ちがよくなって何度も繰り返していた。そこに母親が登場。「やめなさい!」「助けて」という叫び声は、近所に響いていた。それでも慎司は壁にぶつけるのをやめなかった。

そこに、父親が来て「いいかげんにしろ」と一喝。それで騒ぎが収まり、母親と父親は1階(慎司の部屋は2階)に降りていった。しばらくして母親が慎司の部屋に来て「さっきはごめんなさい。気分転換にコンビニにでも行って来たら?」と1000円札をポケットに入れる(実は入れるふりをしただけだった)。

慎司は玄関に行き、そのままコンビニに向かった。その時父親の姿は見ていない。

良幸は、この時点で母親は父親を殺していたと推測する。そして慎司が財布も携帯も持たずコンビニに行っている間に殺したことにするため、1000円札をわざと入れずコンビニ店員に印象付けようとしたのだと推理。

 

父親が殺される前の父と母のやりとりを簡単にまとめる。

父「お前が勉強、勉強と言いすぎなんだよ。高校なんでどこでもいいじゃないか」

母「駄目よ。医学部に行くならN高校(進学校)に行かなきゃ。良幸くんだってそうだったじゃない」

父「あれは良幸が選んだんだ。慎司は慎司がやりたいことをやるのが一番いい。バスケだってできるし顔立ちだっていいし、アイドルにだってなれる」

母「良幸くんが医学部に受かった時は喜んでたじゃない。慎ちゃんだってまだまだこれからよ」

父「それは嬉しいが、あんなにおかしくなるまで勉強する必要はない」

母「それってどういう意味?」

父「慎司はもういいってことさ」

 

淳子は一人で、前妻とどちらが夫弘幸を喜ばせられるかを競っていた。

その手段は、夫が喜ぶ子供を育てるということだった。良幸が医学部に入ったことに夫は喜んだから、それ相当かそれ以上の子を、慎司を、育て上げなければと思っていた。

それなのに、夫は慎司に期待していないということがわかり、淳子はこれまでの自分の育て方を全否定されたような気持ちになったのだろう。

 

考察

遠藤家の一悶着

事件があった次の日5日の夜(事件は3日24時頃だったので、体感的には2日後ということになるが)、遠藤家でも一悶着あった。

小島さと子の助けでなんとか落ち着いたが、遠藤真弓がその子彩花の上に馬乗りになり、窒息させ殺そうとしていた。

この出来事は、物語の中でも大切な意味を持っていると思った。

高橋家の事件で、人を殺すわけがないと思われていた淳子が夫を衝動的に殺してしまったいきさつを、暗に示している出来事だと感じた。淳子が夫を殺害したいきさつを、物語中で誰かの推測という形で示すよりも、事件に近い遠藤家の出来事、しかも3日もあけずそれが起こることによって、より具体的に、臨場感を持って想像することができる。

 

坂道病

彩花によると、坂道病とは「普通の感覚を持った人が、おかしなところで無理をして過ごしていると、だんだん足元が傾いているように思えてくる。精一杯踏ん張らなきゃ転がり落ちてしまうけれど、意識すればするほど坂の傾斜はどんどんひどくなっていって、自分自身が歪んでしまう。その歪みに気付かないから、背中をトンと軽く押されただけで、バランスを崩して転がり落ちてしまう」というもの。

簡単に言うと、身の丈に合わないところで無理して生活していると、だんだん苦しくなって自分というものを見失う。そこに何かしらのイベント(それは実に軽いもので、トリガーだと気づかない)が起こった時、途端に冷静にはいられなくなる、ということである。

 

遠藤家での出来事は完全にこれによるものである。彩花は毎日のように癇癪を起しているから何でもないことだが、真弓はもう限界で、この日の彩花の癇癪がトリガーとなったのである。

 

彩花は、小島さと子も坂道病だといった。

スパンコールをつけた手作りのバッグをいつも持ち歩いていて、それをひばりヶ丘に例えていた。自分の過去の大切な場所を、時代の流れに逆らいながらずっと理想の形で守り続けることにこだわっていた。

 

感想

一度読んだことがあるが、真犯人が自首して、結局犯人が変わらないというのに衝撃を受けたのを思い出した。

『Nのために』と頭の中がごちゃごちゃになっていたが、今回再度読んでちゃんと整理できたので良かった。

 

夜行観覧車」というタイトルの由来は、推測の域を出ないが、遠藤家・高橋家・小島さと子の3つの視点でぐるぐると物語が進んでいく様子を「観覧車」、物語は比較的夜の描写が多く、夜に物語が発展することが多かったから「夜行」なのかな、と思った。

また、物語中にも観覧車が出て来るが、最後の小島さと子の台詞「長年暮らしてきたところでも、一周まわって降りた時には同じ景色が少し変わって見えるんじゃないかしら」という部分は、何を意味しているのか考察できなかった。

 

このブログでは真犯人を高橋淳子と推測している。

最後に出てくる週刊誌の記事では、夫が教育熱心で慎司に圧をかけ、慎司を守るために淳子が夫を殴って殺した、という趣旨の記事になっているが、高橋家の兄弟話しているときに「真実を知っているのは俺たちだけでいい」といっていることから、世間的には父が毒親としてみられることになっていても、真実は優しい父親だったということだと思う。

読み進めるにつれ、段々と真実が明らかになっていくのがとても面白い。

 

坂道病はきっとこの世界にも数えきれないくらい存在しているし、いつでも自分が背中をトンと押してしまう人になりかねないのだと、考えさせられる小説だった。

 

おわりに

最後までお読みいただきありがとうございました!

読んだ人にはなんとなく伝わると思いますが、読んだことがない人にはわかりづらいまとめ方になっていて申し訳ありません。

私は夜行観覧車の表紙が大好きで、お金が貯まったら自分でハード本を買おうかなと思っています。

気になった方は是非読んでみてください(*^▽^*)

 

最後に本のリンクを載せておきます(^^)/

 

夜行観覧車 (双葉文庫)

夜行観覧車 (双葉文庫)

 

 

女がこの世界を手に入れる手段とは。桐野夏生『グロテスク』あらすじ・感想・考察!※ネタバレあり

こんにちは。

最近はバタバタしていて、1日1更新できませんでした。すみません。

い、いや、ネタ切れじゃないですよ!そんなね、そんな💦(笑)

 

はい、今日は桐野夏生さんの小説『グロテスク』を読んだ感想を、僭越ながら書かせていただきます。

ネタバレ苦手な方はお控えください。

深い考察はできないですが、簡単なあらすじ(ネタバレあり)と感想を書きます。

 

あらすじ読み飛ばしたい方は「感想」からどうぞ~(^◇^)

 

 

 

あらすじ

※ネタバレ注意!!

 

名門Q学園(お嬢様学校)出身の女性4人をめぐる物語です。

主人公というか基本の視点は、「わたし」

その妹の平田百合、彼女は美貌の持ち主で、会う者みんなをうっとりさせるような色気と美しさを兼ね備えています。「わたし」もその親も容姿は普通。だから「わたし」は、ユリコのことを突然変異の怪物だといいます。

 

そして「わたし」と同級生の佐藤和恵。努力家ですが、その努力がすべて裏目にでてしまう人。

もう一人、同級生のミツル。彼女は学園で一番頭がよく、要領も良い。和恵がどんなに努力しても勝てない存在。

 

この小説は上・下巻に分かれています。

上巻は主にQ学園時代のお話が書かれます。私立で、初等、中等、高等部、大学とストレートに進学していきます。高等部のお話が主ですが、Q学園は中等部からの内部生と高等部からきた外部生との確執やプライドが描かれます。

「わたし」と和恵は外部生、ミツルは内部生です。

ユリコは途中入学してきます。

学園内ではいじめなど色んな闇が描かれますが、詳しくは上巻をお読みください(^^)/

 

下巻では、大人になった4人が描かれます。

というより、大人になった「わたし」をめぐって事件が起こり、その事件に関わった人中心に話が進みます。

その事件とは、ユリコと和恵が連続的に殺害されて見つかった、という事件です。

その殺害方法も良く似ているため、連続殺人事件として世間を騒がせました。

 

実は、大人になったユリコも和恵も娼婦をしていました。

ユリコは高校の時から売春をしていて、生涯身を売って生きることを選びました。

和恵は大手ゼネコンのG建設という会社に総合職として入社、昼はそこの会社員として働き、夜は娼婦をしていました。

世間を騒がせたのは、ユリコではなく和恵の生き方でした。成功しているようにみえるOLがなぜ娼婦もしていたのか?その生き方に皆興味を持ったのです。

 

また、殺人事件の被疑者として中国人のチャンという男があげられました。

チャンの人生も作品中に描かれているのですが、割愛させていただきます(*^▽^*)

 

(「わたし」視点を中心とした3人)

ユリコについて

「わたし」はいつも、美しい容姿を持つユリコのお姉さんとして認知され、必ずユリコの容姿と比較されます。ユリコの美貌というのはその辺の女性の美しさとは比較にならないくらいで、ユリコに会った人は「こんなに美しい女性のお姉さんも、さぞ美しいだろう」という考えで普通かそれ以下の「わたし」を見て、どう反応していいのかわからないというふうな顔を必ずするのです。

だから、「わたし」はユリコに対する劣等感を常に抱えていて、容姿に対する強いコンプレックスがあります。そして、ユリコが大嫌いなのですが、「わたし」は美しい容姿の人間が大好きであるという矛盾も抱えています。

また、娼婦として生きることを選んだユリコを、馬鹿にもしていました。ユリコは根っからの男好きである、汚らわしいと。娼婦なんてしていたら、殺されても当然であると。

 

和恵について

「わたし」は和恵が一心に努力する姿を馬鹿にしています。勉強も、容姿も、ミツルとユリコにかなうわけはありません。学園内でもみんなからいじめられていました。

和恵は痩せている自分が一番綺麗だと思っているので、どんどん痩せていきます。それを見ていて面白いとおもった「わたし」は、拍車をかけるために和恵に「男は痩せている女性が好きよ。あなたは痩せるたびに綺麗になっている」と口先だけのことを言います。和恵は素直なのでその言葉をずっと信じていました。

だから娼婦になってからも痩せる一方で、客からは痩せすぎだと文句を言われるばかり。「なぜ?痩せてる私は綺麗なのに」と信じて疑わない姿に悲しくなります。

昔からがさつで、洋服などにも気を遣わなすぎるのですが、それは40歳近くになっても変わりませんでした。でも化粧は濃く、白いファウンデーションのうえに青いアイシャドウ、真っ赤な口紅を毎日しており、みんなから幽霊やおばけ扱いされます。もちろん和恵はその姿をした自分を綺麗だと思っています。

 

ミツルについて

「わたし」はミツルに恋慕を抱いたこともあるくらい、ミツルの賢さに惹かれていました。Q学園では、何かに秀でていないとダメ。勝ち負けの観念が植え付けられ、日本の社会の縮図のようなカーストも存在している、地獄のような場所です。ミツルはその社会で、賢さをもって一位になることを選びました。

「わたし」はQ学園内で「悪意」を持って一位になることを選びました。そんな自分とミツルに何か通じるものがあると感じて、好意をもったのでした。

ミツルは東大医学部に合格し、医者になりました。しかし、その後宗教団体に入信し、そこで人を殺めてしまったのです。夫は十数人の人間を殺してしまいました。それでミツル夫婦は逮捕、ユリコたちの連続殺人事件が起きたころ、ミツルは6年の服役を終えて出所したばかりでした。

ミツルは高校の時とは別人になったみたいでした。言葉を選び聡明だったミツルは、「わたし」の前で悪口を言ったり卑屈になったりしていました。そんなミツルに「わたし」は嫌気がさしました。

 

(物語の結末まで)

ユリコと和恵は娼婦になってからよく会話をしていました。渋谷のネオン街にある地蔵の横が和恵の商売のなわばりでしたが、ユリコがそのなわばりに立たせてほしいと言ってきました。和恵は「私と全く同じ格好をしてここに立つのならいいわよ」と条件付きで認めたので、ユリコは全く同じ格好をして立つようになりました。

和恵が、自分と同じ格好をしたユリコを見た時の会話が好きです。

和恵「何その恰好。あなたそれがわたしだっていうの?怪物みたいよ」

ユリコ「そうよ、あなたは怪物。私たちみたいな娼婦は怪物かもね」

 

連続殺人事件の公判で、Q学園の生徒だった木島高志に会いました。木島はユリコの売春を斡旋していた本人でした。木島の隣には、若くて美しい少年がいました。彼はユリコのたった一人の子供でした。「百合雄」といいました。

「わたし」は彼と一生暮らしていこうと心に決めました。彼は眼が見えなかったのです。目が見えないということは、自分の美しさもわからないし「わたし」の醜さもわからない。目が見えない彼に「わたし」は自分の容姿を美しく誇張して伝えました。彼の中で、「わたし」は美しい人として生き続けるのです。彼は「わたし」の劣等感を克服してくれる存在でした。

 

百合雄は「わたし」に、いいPCがほしいと言いました。それが百合雄と住むための条件でもありました。

「わたし」は買ってあげたいけど、なんにせよお金がありません。それを百合雄に相談すると、「僕のお母さん(ユリコ)みたいに、娼婦をしてみたら?」と言われました。

 

「わたし」は葛藤した末、ユリコと和恵が立っていた地蔵の前で商売を始めました。和恵と全く同じ格好をして。

「わたし」が身を売り、百合雄が金銭管理等をする、という関係でした。しかし、地蔵前に毎日立っていると百合雄の美しさがどんどん有名になり、ふたりの関係は逆になりました。「わたし」は百合雄が汚されているような気がして、嫌な気分になりました。

そんな時でした。「わたし」を買ってくれるという男が現れました。

「優しくしてよ、お願いだから」

「わたし」は、和恵の手記に書いてあった台詞を真似て言いました。

 

「いいですよ。だから、あなたも私に優しくして」

男が放ったのは、チャンの言葉でした。

 

 

 

感想

 

大逆転!(*'▽')

イヤミスときいていたのですが、この作品はかなりすっきりしましたね。

 

最後の「あとがき」にもあったように、この作品は「わたし」の視点からのものが強く、小説の語り口調は悪口です。その間にもユリコの手記や和恵の日記が織り交ぜられ、「わたし」の主張とユリコや和恵の主張が異なっているため、彼女たちがどんな性格なのか、どんなことを思っているのか、読み進めれば進めるほどわからなくなりました。

ミツルの日記等はなく、「わたし」の高校時代の話と公判中のカフェでの会話で推測するしかありません。

ミツルは「わたし」の口調によって、上巻でかなり美化された人物像として想像されますが、後半ミツルが出てきたときに思っていた人物像と全く違っていて、驚きとか、落胆に近いものを覚えます。思っていることを素直に言って、でも賢くて、上巻で想像したような聡明さはみられませんでした。

 

人物の描写も、この物語の見どころだと思いました。

物語の後半で描写される各人物の見た目は、それぞれの人が持つ黒い部分が外面ににじみ出てきているような見た目に変貌していました。特に「わたし」は、ミツルから「悪意に満ちた顔」と言われます。私は、考えていることや経験等が人相に出てくると思っているのですが、やっぱり人間は心の中で思っていることが年をとるにつれて外にも出てくるのかなあ、と本を読みながら思いました。

 

あとはやっぱり、終わり方良いですね。

とてもすっきりしました。

 

ずっといじめられて邪魔者扱いされていた和恵は、落ちるところまで落ちて、無敵になりました。カイジの奴隷カードみたいな感じです。

周りに好きな人もいないし、会いたいと思う人も一人もいない。

 

たった一人で生き抜いた和恵は、あの怪物ユリコに「あなたは怪物よ」と言わせました。あんなに近づきたかったユリコと遂に並んだのです。

それだけではなく、「わたし」も和恵と同じ道をたどることになったのは、今までの悪意に対する報いにも思えました。言い換えれば、「わたし」は和恵に負けたのです。

和恵が勝つ日が来たのですね。

それが分かった時、とてもすっきりしました。読んでいる途中はわからなかったけど、自分の気持ちを整理したら、「わたし」やユリコに対して少し嫌な気持ちを持っていた自分に気づきました。

 

和恵がこの物語主人公だったのではないか、と思ったのですが、あとがきを読んで、読者が和恵に自分自身を投影することがわかりました。*1

 

 

「わたし」は結局娼婦になりました。ユリコや和恵のことを馬鹿にしながら、自分も身売りすることを決めたのです。

もしわたしが娼婦になるとしたら誰とも違う理由でなくてはなりません。*2

 

男というものは常に狡賢く、顔も体も考えもがさつです。利己的でその場しのぎ、形さえ整えれば中身などどうでもよく、自分の欲望のためなら相手を傷つけても一向に頓着しない人々であります。(中略)

しかし、ここに例外がいるのです。百合雄。百合雄ほど美しく、純粋な心を持った少年はどこにもおりません。百合雄が成長して、あの醜い男たちと同類になるかと思うと、わたしは悔しくて歯噛みしたくなります。わたしが娼婦になるのは百合雄という少年を醜い男にしないように守り、二人だけの楽しい生活を続けたい、という理由なのです。 *3

 

「わたし」はさんざん和恵のことをプライドが高いと悪く言っていましたが、この物語の登場人物全員プライドが高いです(笑)

「わたし」はそんな自尊心を守るために、娼婦になることに理由づけし、道を選んだのかなと思いました。

 

‪「性交だけが世界を手に入れる手段」

女性は男性社会の中に揉まれ、淘汰されていくだけの存在。でも、そんな女性が唯一世界を手にする方法、それが性交であると、物語は女性の生きる地獄に対して1つの結論を導き出すのでした。

 

 

最後に

ここまで読んでいただき、ありがとうございました。

とっても長い物語なので、読むのにかなり時間がかかりますがその分すっきりも大きいので是非お勧めしたいです!!

他に、何かおススメの本があればおしえていただきたいです(*´▽`*)

 

あと、今月のPVがすでに100を超えたみたいです!

本当にありがたいです…、これからも頑張ります(´;ω;`)!!!

では、また更新します。

ありがとうございました(^^)/

 

最後に本のリンクを載せておきますね♪

 

グロテスク〈上〉 (文春文庫)

グロテスク〈上〉 (文春文庫)

 

 

 

グロテスク〈下〉 (文春文庫)

グロテスク〈下〉 (文春文庫)

 

 

*1:桐野夏生『グロテスク 下』p453

*2:桐野夏生『グロテスク 下』p.433

*3:桐野夏生『グロテスク 下』p433~434

和食「さと」の天ぷら

 

こんばんは。

本日はバタバタしていたので帰ってきたら一時間前までぐっすり寝てました。

 

今日、結構大きなイベントがあって、それが一段落したのでその場で友達と食事に行くことになりました。

なんとなく私は天ぷらが食べたい気分で、友達も和食が食べたいと言っていたので、その場でいいお店がないか検索をかけました。

私は普段自転車が移動手段なのですが、その友達は車を持っているので乗せてもらって、少し遠出しました。

ドライブって楽しいですよね♪ 私はペーパーなので、運転してもらう方には申し訳ないのですが…

 

それで見つけたお店が、和食「さと」

私はお恥ずかしい話ですが、このお店を聞いたことがなくて、友達に聞いたところ、「いい感じのファミレスみたいなところ」と言われました。

お店についたら全くファミレスに見えない内装で、メニューも多くて驚きました。

注文はパットで… 時代は進化していますね。

 

私は迷わず天ぷらがのっている「さと和膳」を注文しました。

友達は海老天鍋を注文していました。

f:id:sugarpotato:20181022235139j:plain

 

sato-res.com

 

注文してから届くのも早いし、すごくおいしいし、これで1400円ほど…

信じられないくらいコスパが良くてびっくりしました。

休日は家族連れも多く来ているみたいですね。

 

少し調べたら、和食さとは「サトフードサービス」の中の店舗みたいですね。

関西・中部・関東地方にあるらしいので、愛媛出身の私は知らないはずです(笑)

四国にも出店してほしいなあ(^^)

 

このお店は、また行きたいお店リストに追加されました。

明日は別の友達と女子会をします!

いい感じのお店予約したので楽しみです♪

 

和食さとのメニュー見てたらおなかすいてきたので、今日はこの辺で失礼します。

明日は花街のこと更新したいなあ。

本日も読んでいただきありがとうございました!