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女がこの世界を手に入れる手段とは。桐野夏生『グロテスク』あらすじ・感想・考察!※ネタバレあり

こんにちは。

最近はバタバタしていて、1日1更新できませんでした。すみません。

い、いや、ネタ切れじゃないですよ!そんなね、そんな💦(笑)

 

はい、今日は桐野夏生さんの小説『グロテスク』を読んだ感想を、僭越ながら書かせていただきます。

ネタバレ苦手な方はお控えください。

深い考察はできないですが、簡単なあらすじ(ネタバレあり)と感想を書きます。

 

あらすじ読み飛ばしたい方は「感想」からどうぞ~(^◇^)

 

 

 

あらすじ

※ネタバレ注意!!

 

名門Q学園(お嬢様学校)出身の女性4人をめぐる物語です。

主人公というか基本の視点は、「わたし」

その妹の平田百合、彼女は美貌の持ち主で、会う者みんなをうっとりさせるような色気と美しさを兼ね備えています。「わたし」もその親も容姿は普通。だから「わたし」は、ユリコのことを突然変異の怪物だといいます。

 

そして「わたし」と同級生の佐藤和恵。努力家ですが、その努力がすべて裏目にでてしまう人。

もう一人、同級生のミツル。彼女は学園で一番頭がよく、要領も良い。和恵がどんなに努力しても勝てない存在。

 

この小説は上・下巻に分かれています。

上巻は主にQ学園時代のお話が書かれます。私立で、初等、中等、高等部、大学とストレートに進学していきます。高等部のお話が主ですが、Q学園は中等部からの内部生と高等部からきた外部生との確執やプライドが描かれます。

「わたし」と和恵は外部生、ミツルは内部生です。

ユリコは途中入学してきます。

学園内ではいじめなど色んな闇が描かれますが、詳しくは上巻をお読みください(^^)/

 

下巻では、大人になった4人が描かれます。

というより、大人になった「わたし」をめぐって事件が起こり、その事件に関わった人中心に話が進みます。

その事件とは、ユリコと和恵が連続的に殺害されて見つかった、という事件です。

その殺害方法も良く似ているため、連続殺人事件として世間を騒がせました。

 

実は、大人になったユリコも和恵も娼婦をしていました。

ユリコは高校の時から売春をしていて、生涯身を売って生きることを選びました。

和恵は大手ゼネコンのG建設という会社に総合職として入社、昼はそこの会社員として働き、夜は娼婦をしていました。

世間を騒がせたのは、ユリコではなく和恵の生き方でした。成功しているようにみえるOLがなぜ娼婦もしていたのか?その生き方に皆興味を持ったのです。

 

また、殺人事件の被疑者として中国人のチャンという男があげられました。

チャンの人生も作品中に描かれているのですが、割愛させていただきます(*^▽^*)

 

(「わたし」視点を中心とした3人)

ユリコについて

「わたし」はいつも、美しい容姿を持つユリコのお姉さんとして認知され、必ずユリコの容姿と比較されます。ユリコの美貌というのはその辺の女性の美しさとは比較にならないくらいで、ユリコに会った人は「こんなに美しい女性のお姉さんも、さぞ美しいだろう」という考えで普通かそれ以下の「わたし」を見て、どう反応していいのかわからないというふうな顔を必ずするのです。

だから、「わたし」はユリコに対する劣等感を常に抱えていて、容姿に対する強いコンプレックスがあります。そして、ユリコが大嫌いなのですが、「わたし」は美しい容姿の人間が大好きであるという矛盾も抱えています。

また、娼婦として生きることを選んだユリコを、馬鹿にもしていました。ユリコは根っからの男好きである、汚らわしいと。娼婦なんてしていたら、殺されても当然であると。

 

和恵について

「わたし」は和恵が一心に努力する姿を馬鹿にしています。勉強も、容姿も、ミツルとユリコにかなうわけはありません。学園内でもみんなからいじめられていました。

和恵は痩せている自分が一番綺麗だと思っているので、どんどん痩せていきます。それを見ていて面白いとおもった「わたし」は、拍車をかけるために和恵に「男は痩せている女性が好きよ。あなたは痩せるたびに綺麗になっている」と口先だけのことを言います。和恵は素直なのでその言葉をずっと信じていました。

だから娼婦になってからも痩せる一方で、客からは痩せすぎだと文句を言われるばかり。「なぜ?痩せてる私は綺麗なのに」と信じて疑わない姿に悲しくなります。

昔からがさつで、洋服などにも気を遣わなすぎるのですが、それは40歳近くになっても変わりませんでした。でも化粧は濃く、白いファウンデーションのうえに青いアイシャドウ、真っ赤な口紅を毎日しており、みんなから幽霊やおばけ扱いされます。もちろん和恵はその姿をした自分を綺麗だと思っています。

 

ミツルについて

「わたし」はミツルに恋慕を抱いたこともあるくらい、ミツルの賢さに惹かれていました。Q学園では、何かに秀でていないとダメ。勝ち負けの観念が植え付けられ、日本の社会の縮図のようなカーストも存在している、地獄のような場所です。ミツルはその社会で、賢さをもって一位になることを選びました。

「わたし」はQ学園内で「悪意」を持って一位になることを選びました。そんな自分とミツルに何か通じるものがあると感じて、好意をもったのでした。

ミツルは東大医学部に合格し、医者になりました。しかし、その後宗教団体に入信し、そこで人を殺めてしまったのです。夫は十数人の人間を殺してしまいました。それでミツル夫婦は逮捕、ユリコたちの連続殺人事件が起きたころ、ミツルは6年の服役を終えて出所したばかりでした。

ミツルは高校の時とは別人になったみたいでした。言葉を選び聡明だったミツルは、「わたし」の前で悪口を言ったり卑屈になったりしていました。そんなミツルに「わたし」は嫌気がさしました。

 

(物語の結末まで)

ユリコと和恵は娼婦になってからよく会話をしていました。渋谷のネオン街にある地蔵の横が和恵の商売のなわばりでしたが、ユリコがそのなわばりに立たせてほしいと言ってきました。和恵は「私と全く同じ格好をしてここに立つのならいいわよ」と条件付きで認めたので、ユリコは全く同じ格好をして立つようになりました。

和恵が、自分と同じ格好をしたユリコを見た時の会話が好きです。

和恵「何その恰好。あなたそれがわたしだっていうの?怪物みたいよ」

ユリコ「そうよ、あなたは怪物。私たちみたいな娼婦は怪物かもね」

 

連続殺人事件の公判で、Q学園の生徒だった木島高志に会いました。木島はユリコの売春を斡旋していた本人でした。木島の隣には、若くて美しい少年がいました。彼はユリコのたった一人の子供でした。「百合雄」といいました。

「わたし」は彼と一生暮らしていこうと心に決めました。彼は眼が見えなかったのです。目が見えないということは、自分の美しさもわからないし「わたし」の醜さもわからない。目が見えない彼に「わたし」は自分の容姿を美しく誇張して伝えました。彼の中で、「わたし」は美しい人として生き続けるのです。彼は「わたし」の劣等感を克服してくれる存在でした。

 

百合雄は「わたし」に、いいPCがほしいと言いました。それが百合雄と住むための条件でもありました。

「わたし」は買ってあげたいけど、なんにせよお金がありません。それを百合雄に相談すると、「僕のお母さん(ユリコ)みたいに、娼婦をしてみたら?」と言われました。

 

「わたし」は葛藤した末、ユリコと和恵が立っていた地蔵の前で商売を始めました。和恵と全く同じ格好をして。

「わたし」が身を売り、百合雄が金銭管理等をする、という関係でした。しかし、地蔵前に毎日立っていると百合雄の美しさがどんどん有名になり、ふたりの関係は逆になりました。「わたし」は百合雄が汚されているような気がして、嫌な気分になりました。

そんな時でした。「わたし」を買ってくれるという男が現れました。

「優しくしてよ、お願いだから」

「わたし」は、和恵の手記に書いてあった台詞を真似て言いました。

 

「いいですよ。だから、あなたも私に優しくして」

男が放ったのは、チャンの言葉でした。

 

 

 

感想

 

大逆転!(*'▽')

イヤミスときいていたのですが、この作品はかなりすっきりしましたね。

 

最後の「あとがき」にもあったように、この作品は「わたし」の視点からのものが強く、小説の語り口調は悪口です。その間にもユリコの手記や和恵の日記が織り交ぜられ、「わたし」の主張とユリコや和恵の主張が異なっているため、彼女たちがどんな性格なのか、どんなことを思っているのか、読み進めれば進めるほどわからなくなりました。

ミツルの日記等はなく、「わたし」の高校時代の話と公判中のカフェでの会話で推測するしかありません。

ミツルは「わたし」の口調によって、上巻でかなり美化された人物像として想像されますが、後半ミツルが出てきたときに思っていた人物像と全く違っていて、驚きとか、落胆に近いものを覚えます。思っていることを素直に言って、でも賢くて、上巻で想像したような聡明さはみられませんでした。

 

人物の描写も、この物語の見どころだと思いました。

物語の後半で描写される各人物の見た目は、それぞれの人が持つ黒い部分が外面ににじみ出てきているような見た目に変貌していました。特に「わたし」は、ミツルから「悪意に満ちた顔」と言われます。私は、考えていることや経験等が人相に出てくると思っているのですが、やっぱり人間は心の中で思っていることが年をとるにつれて外にも出てくるのかなあ、と本を読みながら思いました。

 

あとはやっぱり、終わり方良いですね。

とてもすっきりしました。

 

ずっといじめられて邪魔者扱いされていた和恵は、落ちるところまで落ちて、無敵になりました。カイジの奴隷カードみたいな感じです。

周りに好きな人もいないし、会いたいと思う人も一人もいない。

 

たった一人で生き抜いた和恵は、あの怪物ユリコに「あなたは怪物よ」と言わせました。あんなに近づきたかったユリコと遂に並んだのです。

それだけではなく、「わたし」も和恵と同じ道をたどることになったのは、今までの悪意に対する報いにも思えました。言い換えれば、「わたし」は和恵に負けたのです。

和恵が勝つ日が来たのですね。

それが分かった時、とてもすっきりしました。読んでいる途中はわからなかったけど、自分の気持ちを整理したら、「わたし」やユリコに対して少し嫌な気持ちを持っていた自分に気づきました。

 

和恵がこの物語主人公だったのではないか、と思ったのですが、あとがきを読んで、読者が和恵に自分自身を投影することがわかりました。*1

 

 

「わたし」は結局娼婦になりました。ユリコや和恵のことを馬鹿にしながら、自分も身売りすることを決めたのです。

もしわたしが娼婦になるとしたら誰とも違う理由でなくてはなりません。*2

 

男というものは常に狡賢く、顔も体も考えもがさつです。利己的でその場しのぎ、形さえ整えれば中身などどうでもよく、自分の欲望のためなら相手を傷つけても一向に頓着しない人々であります。(中略)

しかし、ここに例外がいるのです。百合雄。百合雄ほど美しく、純粋な心を持った少年はどこにもおりません。百合雄が成長して、あの醜い男たちと同類になるかと思うと、わたしは悔しくて歯噛みしたくなります。わたしが娼婦になるのは百合雄という少年を醜い男にしないように守り、二人だけの楽しい生活を続けたい、という理由なのです。 *3

 

「わたし」はさんざん和恵のことをプライドが高いと悪く言っていましたが、この物語の登場人物全員プライドが高いです(笑)

「わたし」はそんな自尊心を守るために、娼婦になることに理由づけし、道を選んだのかなと思いました。

 

‪「性交だけが世界を手に入れる手段」

女性は男性社会の中に揉まれ、淘汰されていくだけの存在。でも、そんな女性が唯一世界を手にする方法、それが性交であると、物語は女性の生きる地獄に対して1つの結論を導き出すのでした。

 

 

最後に

ここまで読んでいただき、ありがとうございました。

とっても長い物語なので、読むのにかなり時間がかかりますがその分すっきりも大きいので是非お勧めしたいです!!

他に、何かおススメの本があればおしえていただきたいです(*´▽`*)

 

あと、今月のPVがすでに100を超えたみたいです!

本当にありがたいです…、これからも頑張ります(´;ω;`)!!!

では、また更新します。

ありがとうございました(^^)/

 

最後に本のリンクを載せておきますね♪

 

グロテスク〈上〉 (文春文庫)

グロテスク〈上〉 (文春文庫)

 

 

 

グロテスク〈下〉 (文春文庫)

グロテスク〈下〉 (文春文庫)

 

 

*1:桐野夏生『グロテスク 下』p453

*2:桐野夏生『グロテスク 下』p.433

*3:桐野夏生『グロテスク 下』p433~434